剛くんと麻衣ちゃんの場合
剛くん(仮名)に彼女ができました。
彼女は麻衣ちゃん(仮名)といって、まるで恋愛シュミレーションに出てくるみたいな優しくて大人しくてちょっと内気で、でも決して暗くなく笑顔が可愛い美少女です。
剛くんはそんな彼女を「俺が守ってやるんだ」と張り切っていました。
二人は初めてのデートに出かけました。
剛くんは自慢のスポーツカーで迎えに行きました。
剛くんは車が大好きで運転にも自信がありました。首都高に乗るとかっこいい所を見せようとびゅんびゅん飛ばします。
自分の車がいかに性能がいいか、この車を手に入れるのにどれだけバイトで苦労したかなどと、周りの車をどんどん追い越しながら楽しそうに話します。麻衣ちゃんの笑顔が少しこわばってるのには気が付いていません。
合流地点に来ました。剛くんの車の前に強引に車が割り込んできました。
「まったくこういう下手くそがいるから事故が減らないんだよね。」
剛くんは怒って窓を開けて怒鳴りました。
「危ねぇだろバッカヤロー!!!」
二人は首都高を降りておしゃれなレストランに入りました。
麻衣ちゃんが以前雑誌で見て是非行きたいと言ってたレストランです。
料理が来ました。ところが食べてみると期待してた程美味しくありません。
「なんかさぁ、全然美味しくないじゃん?」
剛くんは少し嫌な顔をしました。
「俺もっと美味しいとこ知ってるから今度そこ行こうよ」
「そうね…ごめんなさい…」
麻衣ちゃんは申し訳なさそうに言いました。
「あ…」
「ん? どうしたの?」
「これ…」
なんと麻衣ちゃんの料理にあろうことか髪の毛が入っていました。
「何だよこれ!俺が文句言ってやる!!」
剛くんは怒って近くにいたウェイトレスを呼びつけました。
まだ新人のウェイトレスは剛くんの剣幕にびびってどうしていいか判らず慌てて店長を呼びに行きました。
「大変申し訳ありません。すぐ新しくお作りいたします。」
店長が飛んできて平謝りします。
「当たり前だろそんなの! この店はどういう管理してるわけ?」
「お代の方も結構ですから…」
「そういう問題じゃねぇんだよ!!!」
剛くんは麻衣ちゃんに嫌な思いをさせた店を許せなくてカンカンです。
料理を作ったコックさんや新人ウェイトレスの対応にも文句をつけてます。
新人ウェイトレスは泣き出してしまいました。
他のお客さんもみんなこっちを見ています。
麻衣ちゃんも泣きそうな顔で小さくなってます。
「まったくせっかくのデートが台無しだよなぁ!」
結局お代はタダにしてもらって店員一同が頭を下げる中店を出ると剛くんは不機嫌な声で言いました。
「・・・・・・・・」
麻衣ちゃんは俯いたまま黙って歩いています。
お店の不手際のせいで機嫌が悪いんだと思った剛くんは麻衣ちゃんにプレゼントを買ってあげることにしました。
「ちょっとこっちおいで。」
剛くんは麻衣ちゃんの手を引いて近くのアクセサリーショップに入りました。
「お詫びに何か買ってあげるよ。どれがいい?」
「え…?」
剛くんが笑って言ったので麻衣ちゃんは少しホッとしました。
「いいの…? んー…カワイイのがいっぱいあって迷っちゃう。」
どれでも好きなの選んでいいよ。」
麻衣ちゃんは機嫌を直して物色し始めました。
やっぱり女の子です。無邪気に目を輝かせてアクセサリーを見てる姿はとっても可愛いです。
「これがいい♪」
麻衣ちゃんが嬉しそうに指差しました。シルバーの羽根の形をしたペンダントです。シンプルで一目見て気に入ったのです。
ところが、
「そんなのでいいの?」
剛くんはちょっと怪訝な顔で言いました。
「そんなのよりさぁ、こっちの方が似合うと思うよ?」
剛くんが指差したのはお花の形の真ん中にピンクの石が入ってるゴールドのペンダントでした。
「絶対こっちの方が似合うよ!」
値段もこっちの方がだいぶ高いです。麻衣ちゃんは困ってしまいました。何故ならこっちは子供っぽくて派手で全然麻衣ちゃんの好みじゃなかったからです。
「こっちにしなよ。ね?」
剛くんに笑顔でそう言われると優しい麻衣ちゃんは買ってもらう手前これ以上我がままは言えないと思って、
「うん…こっちもカワイイね…じゃこれにする。」
と、剛くんの言うとおりにしました。
店を出て、剛くんはネックレスを麻衣ちゃんに付けてくれました。
「うん、やっぱりすごく似合ってるよ!」
「ありがとう…」
剛くんはとても満足気でした。
「これからどこ行く?」
麻衣ちゃんは少し考えたあと
「…今日はちょっと疲れたからもう帰りたいな。」
と言いました。
剛くんはがっかりしましたが、初めてのデートだし嫌なこともあったから無理も無いなと思って今日の所は何もせず麻衣ちゃんを送ってあげました。
「今日はどうもありがとう…」
「ううん、全然。また電話するね。おやすみ〜♪」
剛くんはこれからも麻衣ちゃんの為にがんばろうと決意を新たにしました。
剛くんが家に帰ると麻衣ちゃんからメールが来ました。
「やっぱりあなたとは付き合えません。ごめんなさい。」
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